十字金具の重ね箪笥

十字金具の重ね箪笥が仕上がりました。

長い年月の間についた汚れやキズ、金具のサビなどをそのまま残し、その上にクリアのウレタン塗装を何度も重ねて、表面をツルツルに仕上げています。

　

こちらが入荷時、リペア前の状態です。

　

扉と引き出しの調整、割れ補修、木釘の締め直し等を行っています。

　

上段の観音開きの戸と下段右下のガメ戸内には、それぞれ黒く塗られた引き出しが2杯ずつあります。今回内部はオリジナルのままで、クリーニングと動きの調整のみ行っています。

　

こちらの重ね箪笥は、下段に上段を乗せる仕様になっており、上下で分割可能です。搬入時などは、上下を分けて運ぶことができます。分割に工具は必要ありません。

　

背面も割れを補修した後、クリアでコーティングしています。

　

上段は観音開きの戸になっています。

中央の丸い金具、十字の金具、丁番などの金具が迫力満点。

錆びた金具と古びた桐の部分もそのまま塗装で閉じ込めています。

　

観音扉の中には引き出しが２杯。

　

下段は引き出しが２杯とガメ戸。

　

ガメ戸内には引出が２杯。

下の引き出しを全て引き抜くと、奥に杉の箱が隠されおり、ひみつの収納としてお使いいただけます。

　

錠前金具には鍵穴がありますが、鍵はありません。元々出っ張った金具部分をスライドして使用するものですが、今回は誤って施錠してしまわないように固定しています。

　

引き出しの箱は杉板でつくられています。引出し内は割れを補修した後、研磨して汚れを落としています。

　

今回の重ね箪笥は、金具のサビや木部の細かい傷など、意図してつくることが難しい味わい深い表情が魅力的だったため、それらを出来るだけ残すことを念頭に置いて仕上げました。

何度も塗装を繰り返し、実際に使用する際に汚れが手や服などにつかないよう、厚い透明な塗装でしっかりとコーティングしています。

　

透明な塗装を何度も塗り重ねることにより生まれた独特の照り。

長い年月を経た跡を意匠として活かし、味わいはそのままに使いやすく、現代の塗装を施して仕上げた逸品です。